機能性ディスペプシア(FD)とは?胃もたれやみぞおちの痛みの原因と漢方でのアプローチ2025.10.09

機能性ディスペプシア(FD)とは?
「胃もたれが続く」「食後すぐにお腹が張る」「みぞおちがチクチク痛む」
こうした症状が続いているのに、病院で検査をしても「異常なし」と言われたことはありませんか?
このような場合に考えられるのが、**機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)**です。
機能性ディスペプシアは、胃や十二指腸に目立った病変がないのに、慢性的に胃の不快感や痛みが続く状態を指します。
「胃の働きに異常があるのに、形には現れない不調」と言い換えるとわかりやすいでしょう。
機能性ディスペプシアと似た病気との違い
機能性ディスペプシアは、胃炎や胃潰瘍、胃がんなどと症状が似ていますが、検査で異常が見つからないことが大きな特徴です。
「胃カメラでは問題なし」と言われたのに、症状が続く場合は機能性ディスペプシアを疑います。
病名 | 主な症状 | 検査結果 |
胃炎・胃潰瘍 | 胃痛、吐き気、出血 | 内視鏡で炎症や潰瘍が確認できる |
胃がん | 胃痛、食欲不振、体重減少 | 内視鏡で腫瘍が確認できる |
機能性ディスペプシア | 胃もたれ、膨満感、みぞおちの痛み | 目立った異常は見られない |
機能性ディスペプシアの主な症状
機能性ディスペプシアは、大きく分けて2つのタイプに分けられます。
① 食後愁訴症候群(食後もたれタイプ)
少し食べただけでお腹がいっぱいになる
食後に胃が重く、膨らんだ感じが続く
げっぷや胃の張りが多い
② 心窩部痛症候群(みぞおち痛タイプ)
空腹時や食後にみぞおちがチクチク痛む
焼けるような感覚がある
食べると痛みが和らぐこともある
「胃もたれタイプ」「みぞおち痛タイプ」のどちらか、または両方の症状が同時に出る方もいます。
4. 機能性ディスペプシアを疑うサイン
「機能性ディスペプシアっぽい」と思ったら、次のチェックポイントを確認してみましょう。
以下の項目に3つ以上当てはまる場合は、FDの可能性があります。
胃もたれや膨満感が3か月以上続いている
少し食べただけで満腹になりやすい
みぞおちにチクチクした痛みを感じる
ストレスがたまると症状が悪化する
内視鏡検査では異常がないと言われた
薬を飲んでも一時的にしか改善しない
ただし、胃がんや潰瘍などの重大な病気が隠れている可能性もあるため、必ず医師に相談して検査を受けることが大切です。
機能性ディスペプシアはどうやって診断する?
FDは、血液検査やレントゲンだけで簡単にわかるものではありません。
そのため、以下の手順で慎重に診断されます。
診断の流れ
問診
症状がいつから始まったか、どんな時に悪化するかを確認
内視鏡検査(胃カメラ)
胃がんや潰瘍などの器質的な疾患を除外
ピロリ菌検査
ピロリ菌感染による胃炎の可能性をチェック
ローマⅣ基準による診断
「6か月以上症状が続いている」「過去3か月で週に数回以上症状がある」などを確認
このように、他の病気がないことを確認して初めて機能性ディスペプシアと診断されます。
機能性ディスペプシアの原因
FDの原因は1つではなく、複数の要素が絡み合っています。
特に大きな要因は以下の3つです。
胃の動きの異常
食べ物を送り出す力が弱い、または強すぎる
胃酸の分泌異常
胃酸が過剰になり、胃の粘膜が敏感になる
ストレス・自律神経の乱れ
精神的ストレスが胃の働きに影響を与える
現代社会ではストレスが原因となるケースが非常に多く、
**「心と胃はつながっている」**といわれるほど密接な関係があります。
7. 西洋医学での治療法
病院でのFD治療は、主に薬物療法が中心です。
胃酸を抑える薬(PPI、H2ブロッカー)
胃の動きを整える薬(消化管運動改善薬)
抗不安薬、抗うつ薬(ストレス由来の場合)
これらは症状を和らげる効果がありますが、ストレスや体質といった根本原因までは解決できないことも多く、「薬をやめると再発する」という悩みを抱える方も少なくありません。
8. 漢方での機能性ディスペプシア改善アプローチ
漢方では、FDを**「気の巡り」や「胃腸の働きのバランスの乱れ」**ととらえ、
症状だけでなく体質全体を整えることを目指します。
FDに多い体質タイプ
気滞タイプ(ストレス過多)
→ 胃の張り、げっぷ、胸のつかえ、イライラ
気虚タイプ(胃腸が弱い)
→ 少量で満腹、疲れやすい、下痢しやすい
寒熱錯雑タイプ(冷えと熱が混在)
→ 冷たい飲食で症状悪化、みぞおちがチクチク痛む
よく使われる漢方薬例
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):胃の張り、下痢を伴うタイプに
六君子湯(りっくんしとう):胃もたれや食欲不振に
加味逍遙散(かみしょうようさん):ストレス性胃症状に
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):疲労と胃腸虚弱に
※体質によって合う漢方薬が異なるため、必ず専門家に相談しましょう。
自宅でできるセルフケア
機能性ディスペプシアの改善には、日常生活の工夫も欠かせません。
食事はゆっくりよく噛んで食べる
冷たい飲み物・脂っこい食事を控える
寝る直前の食事は避ける
規則正しい睡眠習慣を保つ
深呼吸やストレッチでストレスを解消
これらを取り入れることで、胃への負担を減らし症状が安定しやすくなります。
まとめ|「FDっぽい」と感じたら早めに相談を
検査では異常がないのに胃の不快感が続く → 機能性ディスペプシア(FD)の可能性
胃もたれタイプとみぞおち痛タイプに分かれる
ストレスや自律神経の乱れが大きく関係
西洋医学の薬だけでは再発しやすいケースも
漢方は体質から整えて、根本的な改善を目指せる
「FDっぽい」「胃が常に重い」と感じる方は、我慢せずに医師へ相談しましょう。
さらに漢方薬局や漢方外来で体質診断を受けることで、自分に合った治療法を見つけやすくなります。
執筆者
服部 雄志(国際中医師/漢方専門家)
漢方薬に関する豊富な知識と経験を持ち、不妊治療における漢方相談を多数手がける。
経済的な負担や精神的なストレスを抱える方々に寄り添い、希望を与えるサポートを行っている。
妊活・不妊治療に関する情報発信を行うライター。読者に寄り添った記事を心がけている。
著書に『母になるために大切にしたい妊活の習慣』(WAVE出版)がある。
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